第5章 あなたのためなら
「すご〜い!水だらけ!!みんなが乗ってるやつ、何だろ〜?」
街の人達は、なにか動物のようなものに乗っている。
これが移動手段なのだろう。
「えーっと…ビブルカードは……」
エースのビブルカードを手の平に乗せると、大きな噴水の方へ動いた。
「中心街の方ね。……“花吹雪”」
リンはそう呟くと、一瞬にしてその場から消え去った。
「綺麗な街並み〜!それにしてもこの噴水、高いなぁ。ちょっと怖い…」
リンは、エースの姿が見えないかと下を見下ろす。
「あっ、あの帽子!!エースが被ってたやつに似てる…」
しかも、上半身が裸であの帽子。
そんな人は、エースしかいない。
「やっぱりこの島に来てたんだ!…“花吹雪”!!」
リンは噴水の上から一直線にエースに向かっていった。
なぜかエースにすごく会いたかった。
何もかもを、エースになら吐き出せそうだった。
今の私はローといても意味がない。
一緒にいる資格などない。
「エ〜ス!!」
私は地面にとんっと着地し、そのままエースに抱きついた。
「あぁ?なんだいきなり…ってリンじゃねェか!!」
エースはリンの顔を見るなり、ぎゅっと抱きしめた。
体の温もりがほわっと伝わってくる。
それは暑いからなのか。
メラメラの実の力か。
それとも―――。
「また会えてよかった……会いたかったよ、エース…。」
私はなぜか消え入りそうな声になってしまった。
「おいおいどうした、そんなに嬉しいのか?」
エースはあの時と同じように、笑みを零した。