第5章 あなたのためなら
どくん。どくん。
自分の心臓の音が響く。
(寝られない…!!)
昨日ローにキスされたというのに、今日同じ部屋で、しかもベッドで寝れる訳なんてない。
リンは、ベッドの上で起き上がる。
時計の針は1時半を指していた。
(昨日みたいに外で寝ようかな…。)
今の時期は寒くもないし、風も気持ちが良いし。
ローの方をちらっと見ると……目が合った。
「…まだ起きてたのか。」
「ろ、ローこそとっくに寝たと思ってたわ。」
リンは昨日の出来事が鮮やかに頭に浮かび、思わずふいっと目を反らしてしまう。
「もし外行くんなら俺が出る。お前はここで寝ろ。」
ローは起き上がってベッドから降りようとした。
無意識のうちにローの服の端をぎゅっと掴んでいた。
ローは振り返り、リンを見下ろした。
「……いかないで…。」
避けていたのは私の方なのに。
ローはただ私が眠れるように気遣ってくれただけなのに。
なんでこんなにもざわざわするのかな。
リンは俯いたまま、消えそうな声で呟く。
「一緒に…居てよ…」
手が小刻みに震える。
どこにも行ってほしくない。
私の、私だけの傍にいてほしい。
こんなことを思う私は、どこか変なのかな。