第5章 あなたのためなら
「無理だ。」
その言葉を聞き、クルー達の顔が曇る。
ローはゆっくりとため息をついた。
そして、上を…リンの方を見上げた。
「おいリン。そんなとこにいねェで、コイツらに答えてやってくれ。言いたくなかったら言わなきゃいい。言えるなら自分の口で言え。」
ここに居たの、バレていたのか。
ローにはいつも全てを見透かされているような気がする。
「リン!そんなとこに居たのか!どうやってあんな高いとこへ…」
「キャプテン、リンが落ちちゃうよ!助けようよ…!」
リンは騒いでいるクルー達の方へ、蔓をつたって降りた。
今まで隠していた、こんな私を許して―――。
「どっから蔓を出したんだ?」
「すげェ…」
「私は“プラプラの実”を食べたの。全ての植物を操る能力とでも言ったところかな。」
“植物”というと、かなり幅広い。草花が大好きな私にはぴったりな能力だと思う。
「リンもキャプテンと同じで悪魔の実の能力者だったのか!?」
「能力見せてくれよ!」
「そうね…じゃあ昨日ローに使った能力を見せようかな。」
リンはポケットから水が入っている小さな容器を出し、ごくっと飲み干した。
そして、人差し指で空中にくるっと円を描いた。
ローの方をちらっと見ると、ばっちり目があってしまった。
昨日の一件から、無意識のうちにローのことを避けてしまっている気がする。
透き通った緑の輪がハートの海賊団を包み込む。
「…“癒しの森”」
星屑のようなものが散らばり、クルー達の体に浸透した。