第5章 あなたのためなら
甲板の方に目を向けると、部屋からローが出てきた所だった。
ローか。
ローの姿を見た途端、毛布を掛けてくれたのは彼だと確信した。
「キャプテン、治ったんですか!」
「キャプテン!!会いたかったよ〜!大丈夫?」
クルー達は口々に叫ぶ。
ベポはぎゅうっとローに抱きつく…というよりは、ローに覆いかぶさっているように見える。
思わずクスッと笑みが溢れる。
相変わらず愛されている船長だ。
「リンはどこだ?アイツのおかげだろ、キャプテンが治ったの。」
ペンギンがそう言うと、船内は一瞬のうちに静寂に包まれた。
あれ、そういえば、なんでローが倒れていたことを皆が知ってるのだろうか。
「なァキャプテン。1つ聞きたいことがある。…リンのことだ。」
何を聞かれるのだろう。
甲板に耳を傾け、身体を固くした。
「なんだ。」
ローは一瞬、少し目を見開き、また元の顔に戻った。
「…アイツは…リンは何者なんだ?何の能力が使えるんだ?」
なんで私が能力者だと知ってるのか。
隠す必要はなかったけど、今まで中々言い出せていなかったこと。
彼らに伝えなければならないなら、自分の口から伝えたい。
「昨日、部屋から緑色の、強い光が漏れていたんだ。」
みんなが口々に語りだす。
「リンからは、キャプテンと医学の話をしたいから2人にさせてくれ、と言われてたから、何が起こったのか心配になって…。おれ、覗いちゃったんだよ。」
「そしたらリンがキャプテンに手を当てて…」
「かなり強い光だったんだ。リンの手からそれだけの力を出そうと思ったら、相当の体力を使うと思う。」
「リンは丸一日、飯も食わずにキャプテンの部屋にずっといたんだ。」
何もかもがバレていた。
鼓動が一気に速くなる。
「だから…教えてくれないか?キャプテン。リンの“能力”…!」