第5章 あなたのためなら
「…ロー……」
リンは俺の名を口にした。
そんな顔を見て、思わず頭を撫でてしまう。
リンはスースーと落ち着いた寝息をたてている。
「んん…ロー……すき……」
は…?
今なんと言った…?
気のせいだろうか。
いや、気のせいだろうがいい。
そんなことを言われて黙っている男がいるだろうか?
「ったく…煽りやがって…」
コイツはいつも俺の気を狂わせる。
しかもこんな所で寝ているなど、全く無防備な女だ。
俺はそっとリンの顔に手を添える。
そしてその顔に軽く自分の口を当てた。
「やっぱり口にすんのはまた今度だな…。」
こっちはこんなに狂わされているのに、向こうはなんも思ってないっていうのか。
“すき”というのも、仲間として、だろうか。
途端に胸がずきんと痛む。
俺は軽くため息をついて部屋を出ようとした時、後ろから声が聞こえた。
「あれ、寝ちゃってたや……って…ろ、ロー!!」
振り向いた瞬間、そのままぎゅっと抱きつかれた。