第4章 タイムリミット
「ねぇ…ロー?私歩けるわ。さすがに街のど真ん中でこんな格好…」
さっきから周りの視線をひしひしと感じている。
街のど真ん中を目付きの悪い男が女を抱えて歩いている。
しかもお姫様抱っこで。
こんな光景を見て気にしない人はいるだろうか?
「ごちゃごちゃ言ってねェで、その手を首に回せ。邪魔だ。」
ローはそう言うと帽子を私の頭にぼふっと被せた。
「帽子?なんで…」
「別に。邪魔だっただけだ。」
分かってるよ。
周りから見られるのを気にしてた私に、ちょっとでも視線を感じないようにって、してくれたんじゃないの?
こんなローの優しいとこが…
抑えても、抑えてもどんどん溢れていく。
もうすぐこんな生活も終わるって、もうローとは会えないって、何もかも分かってるのに。
私はぼんやりとした頭で上を見上げる。
見えるのはローの顔。
私にはもうローしか見えてないみたいだ。
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「ん…」
船の中だろうか。
さっきとは違い、身体が軽い。
「起きたか。どうだ、もう大丈夫か。」
「ロー、ありがとう。もう大丈夫。」
私はにこっと微笑んだ。
「ごめんなさい、迷惑かけて…」
「ったく迷惑なもんだ…勝手に無理しやがって。言っておくが、俺は医者だ。この俺の目を誤魔化せると思うな。いいな。」
「……ローは…世界一の医者よ…」
「あァ?なんて言った。」
私がぼそっと呟いたのは聞こえなかったようだ。
――それでいい。
知らなくていい。