第4章 タイムリミット
「じゃ、おれはもうそろそろ行くぜ。」
「また会えるかな…海は広いし…。」
エースとはまた会えるといいと思う。
とてもいい人だったから。
「お前らの船、次はウォーターセブンに行くんだろ?おれもそこに行くし、多分そこで会えるだろ。…ほら、これやるよ。」
エースはそう言って私に1枚の紙を渡した。
「これは…?」
「おれのビブルカードだ。おれがどこにいるかを示すもんだ。それを持ってれば、また会えるさ。」
“また会える”
その言葉を聞き、少し安心した自分がいた。
「分かったわ。また会いましょう、エース。」
「あぁ。今日は楽しかったぜ、リン。あと、さっきお前が倒した奴ら、結構船ん中に色々持ってるぞ。なんか持ってくといい。」
エースはそう言って私の頭をぽんぽんと撫で、去っていった。
「…船の中だっけ、ちょっと見てみよっかな。」
エースはいい人だった。
そう思う自分の中のどこかで少しだけ、
“あれは嘘かもしれない”
そう思う自分もいたのだ…。
どうしても、
過去を捨てられない自分が―――。
「ふぅ…。」
リンは少し長い息を吐いてどこかを見つめた。
地平線?
もっと、もっと遠い海の向こう側?
――どこまでいっても消えはしない。
くるりと海に背を向け、
リンはさっきの海賊船に入っていった。
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「なぁキャプテン…」
「さっきから後ろばっか見て…なんだよ」
「あれ……」
あれがなんだ?おれ達の船………
ともう1隻の船…?
――リンは無事なのか?
一瞬にしてリンのことが頭をよぎる。
「くそ…誰だ…。リンに手ェ出してねェだろうな…おい、すぐに船に戻るぞ!!」
やっぱりアイツを1人にさせるんじゃなかった。
リンは無事だろうか。
もしかしてもう手遅れに――――
駄目だ。無駄なことは考えたくねェ。
もしアイツに手ェ出した奴がいるなら、俺が許さねェ。
俺はクルー達を連れ、
ただ船だけを、
リンだけを見て走った。