第3章 隣にいたいと願うこと
(海岸に来てみたが…ここにもいねェのか。)
見渡した限りでは、リンの姿は見当たらない。
「船に帰ってるかもしれねェしな。1回船に戻るか…。」
そう呟き、ふと上を見る。
胡桃色の髪。
水色の、絹のワンピース。
もこもことしたファーコートに身を包んだその女は―――
「リン…?」
いったいこんな所で何をしているのだろうか。
「あぁ…ロー…?」
木の上に座り込む少女は、リンは、俺に背中を向けたまま静かに俺の名を呼んだ。
「あぁロー? じゃねェよ。早く船行くぞ。もう時間はとっくに過ぎてんだ。」
ずっと探し回ってたくせに、喋る時にはどうしても怒っているような口調になってしまう。
「おいリ……」
リンは俺の方を振り向いた。
その顔は、
涙に濡れていた。
リンの涙がぽたっ…と雪の上に落ちる。
すると、そこから花が開いた。
プラプラの実の能力は涙にも表れるらしい。
リンはおれの方を向いて微笑んだ。
けれどその笑顔は
…嫌いだ。