第6章 何のため?誰のために?
ウォーターセブンに向かっている海の上でリンにこのことを伝えたとき。
リンはふいっと目を泳がせたような気がした。
しかし、その後すぐこくんと小さく頷いた。
いきなりこんなことを言われて困惑しているのだろう、
そう考えてローは気にしていなかった。
今、わかった。
この時からリンは、
出ていくことを決めていたのだ。
それなのに、いつも通り過ごしていた。
自分が1番近い存在とか、勝手に思っていただけだった。
「おい、聞いてるか?」
そう首を傾げローをじっと見る顔は、
温和で少し幼さも感じた。
リンがこの男に惚れた、そう言うことも分からなくもない。
「火拳屋、おめェはリンが好きか」
あまりにも唐突だった。
エースはぴく、と身体を震わせたかと思うと、ローに背中を向ける。
「好きだ」
ぴりぴり張り詰めた空気が流れる。
クルー達はやばいぞ…というようにローの顔を見る。
そんな空気を壊すようにエースが口を開いた。
「おまえの好きとは違うけどな」
振り向いたその顔はにやっと笑っていた。
「昨日おれがリンを止めてもよかった。でもよ、違うんだ。あいつは…おまえに期待する気持ちを隠せてやいねェ。」
“好き”
ただその一言で、様々な意味があると。
まぁおれの好きはよ、親しみの情みてェなもんなんだ、
そう言って慈しむような眼差しで海の先をじっと見つめる。
おれらには共通項があるから。
何故か、そう言っているように見えた。
「海軍だぜ、行ってやれよ」
エースは、“じゃーな”と言い手を振って立ち去ろうとする所だった。
「おい、リンが期待する気持ちを隠せてねェってなんの事だ。」
さっきから気になっていた。
思わず立ち上がり、エースを引き止める。
「それ、ただのブレスレットじゃねェ。リンはおまえに…あいつの1部を預けてんだよ。」