第6章 何のため?誰のために?
「今度こそ海軍本部に連れてかれるかと思ったけど、またここでいいの?」
ヒドゥン島。
そこは名前の通り“隠された島”
「おめェが来るから、今は海軍本部より多い人数がこの島に上陸している。元帥さんはじめ、3大将はもちろん、中将にCP9やら、とにかくやべェメンバーが全員揃っておめェをお待ちかねってことだな。」
普段は立ち入り禁止のこの島に、今はほとんどの海軍がそこに来ているらしい。
「え、CP9が来てる…ってことはルッチが居たり!?」
リンは海軍の中でも特にルッチに懐いているのだ。
「おめェ、よくルッチに殺されず今まで生きてこれたな。」
“殺し屋”とも呼ばれるルッチに着いて回るリンは、普通ならもう消されていてもおかしくはない。
ルッチを恐れていないリンを見ると、彼もリンのことを嫌いではないのだろう。
「私ねこ大好きなんだよね~。あんな怖い顔した人がねこになるとかね、もう思い出すだけで笑えてくる」
そう言ってリンは楽しそうに笑った。
海賊のくせに。
今から自分がどこに行くか知ってるくせに。
なぜこんなにも笑っていられるのだろう。
その笑顔に、
何が込められて――
「海兵のほとんどはおめェのことを妹みてェに見てるからな。戦うことなんて…ねェよ。」
途中、ふっと口を噤み、リンから顔を逸らして海の方に向ける。
その間と仕草。
ちく、と胸が痛んだ。
「スモやんのばーか。…さっきも言ったけど、私は海賊。長年の付き合いだからね、みんなのことは大好きだけど、全員が私のことを妹みたいに見てるわけじゃないでしょ?」
返す言葉が出てこなかった。
軽い気持ちで
少し、リンを落ち着かせてあげるつもりだった。
“戦うことなんてない”
そんなことはあるはずなかった。
この少女は、自分よりも遠い未来まで見ているのだ。
常に
誰も入って来れないようにと
壁を作っている。