第1章 恋はプレーン味
胸を触られたあの日以降、おそ松くんと会話を交わすことはなくなっていた。
向こうは意識しているか分からないけれど、少なくとも私は意識してしまい、兎にも角にも自分から話しかけるのは無理だった。
だって、事故っていいながらちゃっかり指動かしてたし。
しかもみんなが見てる前で!思い出すだけで顔から発火しそうだ。
バイト帰り、1人でそんなことを考えながら自転車を漕いでいたら、あっという間に家に着いていた。
「おかえり」
「ただいま」
部屋着に着替え、リビングへ。
出迎えてくれたのはお母さん。お父さんは仕事仲間と飲み会らしい。
夕飯は大好きなカレー。手を合わせていただきます。
——うん、やっぱりお母さんのカレーは美味しい。
2杯目のカレーを食べながらニュース番組をボーッと眺めていたら、突然テレビが真っ暗になった。
「ねぇ、話あるんだけど」
ダイニングテーブルの向かいにお母さんが座る。
「なに?」
「今日担任の先生から電話あったわよ。進路希望調査無記入だったけど家で話し合ってますかって」