第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
それでもどうしても確かめたくて、ピシッとした姿勢で歩く松野先輩の横に並ぶ。声だけでなく雰囲気も一昨日とどこか違う。いや、今隣にいる先輩がいつもの先輩だから、違和感があったのはあの時なんだよね。
思い返して、あれは夢だったのかも、なんて思ってみたり…。
眼鏡で表情が見えない松野先輩。今何を考えているのかな。
横顔を見るだけで胸が高鳴り、緊張が走る。聞きたい事はいくつもあるのに勇気が出ない。
そんな臆病な自分が嫌になってきた。
(話題、なにか話題は…!あーもうっ!どうして私ってトト子先輩みたいに明るくて可愛くなれないんだろう…)
と、自己嫌悪に陥ったところでプレゼントしたラノベを思い出し、どうだったか話題を切り出してみる。
「本??ごめんなさい、記憶にございまてん」
ショックで一瞬目の前が真っ暗になる。
興味がなくて目を通して無いって事かな?でも勉強で忙しい先輩だから仕方ないか…。
「…そうですか。忙しいのに無理に勧めちゃってすみません」
「だから、記憶に…え?僕借りましたっけ?」
松野先輩はそう言いながら、慌てて鞄を漁り出す。
「あった!これですね!」
鞄から本を発掘すると、松野先輩は汗でズレ落ちたメガネを整えながらホッとした表情を見せた。