第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
「拾ったのかな?忘れててすいません」
感想を聞くだけのはずが、返せと催促したと思われたらしい。先輩は申し訳なさそうに八の字眉を垂れている。
「あの、違うんです!それは先輩にプレゼントしたので…」
「ん?…んん?」
「いらないなら売ってもらって構わないです」
「????」
本当に知らないといった風に首を捻っている。
ついには目までハテナマークになってしまった。
まさか、と思いつつも聞いてみる。
「先輩、本当に覚えてないんですか?」
「はい…実は、勉強疲れのせいか、ここ2日3日記憶が無くて…」
「え…」
言葉を失ってしまった。
私との会話全てを忘れてるなんて…。
立ちすくむ私に、先輩は申し訳なさそうに本を差し出す。
と、その拍子に開きっぱなしの鞄から大量のエロ本がバサバサと落ちた。
「うあああっ!!??」
先輩は顔をまっかにしながらそれを掻き集め、逃げるように走り出す。
「今度からは落とし物はてんてーに届けますので!そ、それでは失礼しまぁぁすっ!」
呆気にとられる私から遠ざかる先輩の背中——が、すぐにこけた。
「大丈夫ですか!?」
思わず駆け寄ると、返された本からしおりが落ちた。
しおりなんて挟んでいたっけ?
疑問に思いながら拾い上げたのは、しおりではなく破かれたノートの切れ端だった。
乱暴に書かれたメモ書きのような何かを読む。
何かを…読む。
「これっ、あのっ」
「さようならー!」
起き上がった松野先輩は、鞄を両手で抱えて駆け出した。
「待ってください!」
「さようならー!」
「せんぱーーい!エロ本なんて私気にしてませんよ!」
「やっぱり見…じゃなくて!これは人体の研究書ですさようならーー!!」
「待ってーー!!」
追いかけっこの末に、私は人生初の告白をするのだった。
のぞみちゃんがずっとすき
不純異性交遊?いやいや中身大人ですから——完