第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
「聞いてない」
「はい…今初めて言いました…けど?」
「引っ越すとか聞いてないっ!いつ?いつ引っ越すの!?」
焦りからか恥じらいもせず詰め寄ると、動揺した彼女の頬は更に赤らむ。
「ら、来週に」
逃れようもない現実を突きつけられ、心がパリンって割れてぐしゃぐしゃに崩れ落ちて、胸の奥にジクジクした痛みが襲った。
のぞみちゃんは僕の気持ちなんかつゆ知らず、視線を外し遠くに向ける。気づけばもう校門の前まで来ていた。
「松野先輩、引っ越す前にお話出来て楽しかったです。ありがとうございました」
「そんなっ…!」
ありがとうを言うのは僕の方だ。こうしてキミから歩み寄ってくれたんだから。
でもこんな事ってある?せっかく会えたのに、話しておしまいなんて…。
そのために僕、タイムリープしてきたの?
これでサヨナラなの?
「では」
「まって!」
背中を呼び止める。
まだだ。
諦めるなチョロ松。これをオチになんかさせない。
振り返り、儚げに微笑む彼女を見てしまえば、挫けそうになった心がギンギンに奮い立つ。
もういい。腹を括った。
いまだにここが、本当に過去なのか長い夢なのか、はたまた妄想なのかは分からない。
だけどきっと、強い想いが奇跡を生んだんだ。一か八か真実を話してみよう。
「あのさ、ちょっといい?」
「はい?」
校門の脇にのぞみちゃんを誘導。周りに聞こえぬよう控えめに、だがしかし、確実に彼女の耳へ僕の声を届ける為、手を口に添えて囁く。
「僕、『未来から来た』って言ったら、キミ、笑う?」
「すみませんそういうのちょっと…」
ああああ引かれたぁぁぁあ!!あからさまにそういう病気だと思われているぅぅぅ!!なんでだよっ!?なんで手信号はよくてこっちはダメなの!?基準がわからないでも好きぃぃぃい!!
「ああ…もしかして先程からの先輩の行動って…」
「ちがっ、違うって!さっきの頭痛は嘘じゃないから!そういう拗らせ方僕は一切無いから!」