第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
「………僕だって、見てた…から…」
僕の言葉に、のぞみちゃんの暗かった表情が一変、目を丸くして顔を上げる。
言い出した手前後には引けない。
こんなリスキーな台詞、きっと普段の僕ならば絶対に口にしないのに。
「僕も……高橋さんがトト子ちゃんと話してるの、いつも見てた」
数年越しの僕の思い。
時空を超えて今届ける。
だけどいつまでも返事がないので、そっと横顔を盗み見ると、
(…赤っ!?すっげー赤っ!!)
俯いてて表情はよく見えないけど、耳までまっかっかになっている。
小っ恥ずかしくて僕も黙り込む。
ハタから見たら、きっと僕も人のこと言えないくらい赤いんだろう。
心臓がうるさい。耳が熱い。
反応がないから、引かれたのかどうか全然わからない。
気まずい雰囲気の中、となりのかわい子ちゃんはカバンをガサゴソし始めた。会話がないのはカバンを漁ってるからですと、無理やり理由を作ってくれているみたいに。
という僕の後ろ向きな思考はすぐに掻き消される。
「そういえば……先輩よく本読んでますよね?よかったらこれ読んでみませんか?私のオススメなんです」
差し出されたのは見覚えのあるラノベだった。
「こ、これ…ほんとに?いいの?」
「まだ1巻しか出てないんですけど、興味持って貰えたらいいなって。何度も読んで中身覚えたので先輩にプレゼントします」
「布教活動です」と付け加えて、彼女は微笑んだ。
興味持つも何も、それはタイムリープ前に探していたラノベの1巻である。
手が震える。
こんなの信じちゃうだろ。運命とか奇跡とかミエナイチカラとか。
「あのっありがとう…大事に読むから」
恐る恐る受け取ると、彼女は嬉しそうにはにかんだ。