第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
「松野先輩、急に真顔で直立不動になったから面白くてっ」
喉の奥で押し殺すように笑っている。
なにがそんなにおかしいのか分からないけど、まぁいいか。お互いの緊張がほぐれた気がするし。
「あの、そろそろ行きますか?」
「あ、そ、そうだねっ」
背筋を伸ばし、姿勢良く歩き出す。
すごいなぁ。この僕が、なんの青春もなかった僕が!異性とこうして並んで学校へ向かうなんて!
チラと隣を盗み見る。
くそう、恋の魔法によりどこもかしこも可愛い。そのキョトンとした顔つきすら愛しい。なんか良い匂いもするし。のぞみちゃんの全てに僕はすっかりメロメロである。
永遠に学校になんか着かなきゃいいのに。
なんて幸せに浸りながらテクテク歩く。
しばらく会話もないまま歩いてると、またしても向こうから話しかけてくれた。
「松野先輩、私、一個下の高橋です」
「うん知ってるよ高橋のぞみさんだよね」
「え?下の名前も覚えていてくれたんですか?」
「あ、ああっ、ほら、トト子ちゃんと仲よかったよね?それで覚えてたんだよ」
密かに好きで名前覚えてたなんて口が裂けても言えない。
どうなるかと思ったけど、僕の発言に納得したように相槌を打っている。
「仲良いというか、トト子先輩に憧れてて私から一方的に話しかけているんです。でも松野先輩に名前覚えてて貰えてたなんて嬉しいです」
いやいやこちらこそなんだけど。
そしてなんだろうこの感じ。
まるで初めての会話とは思えないほどスムーズだ。
会話の相性抜群ということ?ならば身体の方も……
「う…あたま…がっ」
いかがわしい事を考えた刹那、激しい目眩に襲われ膝をつく。
「先輩!?」
(そうだ…気持ち…メーター…まさかっ!?)
ポケットから取り出すとメーターは9.5。今にも10に届きそうだ。
童貞ってどんだけ繊細なの!?
抑えろ抑えてくれ!今は帰るタイミングじゃないだろ!
「あの、大丈夫で「触らないでっ!!」
ビクッとして立ち尽くすのぞみちゃん。
ごめん。今キミに少しでも触れられたら、この時間は終わってしまうんだ。
ほんとはいろんなところに触れて欲しいけど。
触れられればこの時間は終わる。
すなわち、キミと僕の青春も終わってしまう。