第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
瞳を揺らしながらトド松が口を開く。
「……チョロ松兄ちゃん、よくあんな風に言えるね」
「ごめん。たしかに言葉が乱暴だったね」
時間差で襲いくる罪悪感。ガキ相手に大人気なかったかもしれない。
すると、トド松はぶんぶんと首を振った。
「ちがうよ。チョロ松兄ちゃんだって、ボクらに無関心な感じだったのにさ」
そこまで言うと、僕の瞳を探るように覗き込んでくる。
「なんか…うまく言えないけど、チョロ松兄ちゃん昨日から変」
「でもっ!」
それまで押し黙っていたカラ松が、突然僕らの会話に加わってきた。
「さっきはありがとう」
「なんだよ。なんか僕お前にしたっけ?」
僕の問いに、カラ松は寂しそうに笑った。
「あんな風に言ってくれて嬉しかったんだ」
「あんな風?」
「仲良しだったって…」
「ああ、大した意味はないけどさ」
そうは言ったけど、トド松の言う通りならば、カラ松が喜んでいるのも頷ける。
朝のアクシデントのせいで、なんとなく思い出してきた。
この時期のみんな、6つ子がすごく嫌だったんだ。
6つ子にとっての「当たり前」は周りのみんなと違っていて、性格やスキルを比べられたり、そういうのが兎にも角にも煩わしくて…。
6つ子ってなんだろう、なんで6つ子に生まれたんだろう。なんで僕らは「フツー」じゃないんだろう。
そんな風に、6つ子であることに嫌悪感が芽生えた時期が僕らにもあったんだ。
カラ松とトド松はきっと、兄弟がこのまま離ればなれになるんじゃないか不安になってるんだろう。
「大丈夫だよ」
今のお前らには分かんないだろうけどさ。
6人でずっと、同じ屋根の下ニートやってた僕だから分かる。
「だって僕らは6つ子だもん」
2人の頭の上に「?」が浮かんでいる。
うーん、僕もうまいこと説明はできないけど。
「なにがどうなろうと僕らは6つ子。今はみんなバラバラでも、いつかそれを受け入れられる日がくるよ」