第1章 恋はプレーン味
遠くで見守っていた私と岩瀬ちゃんはホッと安堵した。
「あーよかった。おそ松くんってああいう時仕事するよねー」
「うんうん」
と、せっかく岩瀬ちゃんの中で株が上がったというのに、松野くんは突拍子も無いことを切り出した。
「ぃよし、じゃあ仲直りしたところで金貸してくんなーい?」
「は?」
大野くんの目が点になる。
ああ…せっかく和んでいたのに…。
「今日欲しい漫画の最新刊発売日なんだよ〜。おねがーい!買ったらお金返しつつ貸すからさぁ!」
両手を合わせ、可愛く舌を出しておねだりする松野くん。
「お願いっ!このとーり!」
大野くんは頑なに拒む。
「ふざけんな!この間ラーメン食いに行ってまだ返してもらってねーだろ!」
「あれ?そーだっけ?ワリィワリィあははははっ!」
なんて笑いつつ、松野くんは悪びれる様子もなく頭を掻いている。
「お前なぁ、漫画くらいで金たかんなよ!帰るぞ杉山」
「お、おぅ。金ないならバイトしろよ松野。じゃあな」
「えーダメェ!?こんなに頼んでんのに!?ケチー!」
「お前に貸したらいつ返ってくるか分かんねぇよ」
大野くんは苦笑しながら、そう吐き捨てて帰っていった。