第3章 不純異性交遊?いやいや中身大人ですから
拾い上げれば、途端に懐かしさがじんわりと胸に広がってゆく。
写真に写るのはなんてことない下校風景。
校門の前で僕達6つ子がふざけ合いながらピースしている。
その馬鹿騒ぎしてる僕らの後ろに可憐な女子が2人。
「うわぁ!かーわいーいなーぁ!トト子ちゃん!」
と、並んで微笑むのぞみちゃん。
「可愛すぎるぅ!うふふふ!」
うっとりしながら2人を眺める。
超絶可愛かったみんなのヒロイントト子ちゃんには、年齢性別問わずファンがいて、学年が1つ下ののぞみちゃんもそのうちの1人だった。
トト子ちゃんの可愛さは殿堂入りしてるとして、横にいるのぞみちゃんもなかなかのものだ。
いや、その言い方は彼女に失礼だよね。
"可愛い"だけじゃ彼女の魅力は伝え切れない。この想いは表現し切れない。
僕は彼女が好きだった。
話した事すらなかったのに、さ。
人知れずあっためていた恋心は、誰にも知られずに始まり終わって、そして僕はニートになった。
まぁ、よくある青春時代の思い出ってやつ。まったく、僕って真面目すぎるんだよなぁ。もう少し砕けた感じで女子と話せたら、デートの1つや2つ出来たかもしれないのに。
「はぁ…甘酸っぱいなぁ…」
見てよこの笑顔。この素朴な可愛さはまるで野に咲く花のよう。
のぞみちゃん、今どこで何してるんだろう?もう結婚して子供いたりして。
片や僕はこの歳になってアイドルの追っかけして無職童貞…か。
甘酸っぱい記憶に段々と苦味が混ざってきた。
頻繁に見かけたのになぁ。なんで話しかけなかったんだろう。
一度でいいからチャンスがあったなら。
あの頃に戻ってやり直せるなら。
叶うわけもない願望に取り憑かれる。
ダメだダメだ、無性に虚しくなってきた。
せっかくのいい思い出が台無しだ。
寝転び天井を仰ぐ。
「考えるだけ無駄無駄。過去に戻れるわけないんだから」
言い聞かせるようにひとりごちて、写真を胸に瞳を閉じた——。