第2章 純情スクイーズ
「チョロ松くーーん!」
やっと追いついた。全速力で500mは走った。まさかこんなに距離が開いてるとは。
振り返ったチョロ松くんは、荒く息をつく私を見て困惑の表情を浮かべている。
「ごめ、んっ、気分悪くさせちゃったよねっ、謝り、たくて、ごめんねっ」
「べつに何も気にしてないけど。あの、トド松は一緒じゃないんですか?」
「え?」
私より先に向かったはずなのに。
まさかトドちゃん…はぐれちゃったの…?
「どうしよう…チョロ松くん探してきっとまた迷子に…!」
反射的にトドちゃんに電話をかけたけど繋がらない。充電切れてるのかも。
頑張ってちょこちょこ兄を探す姿が目に浮かぶ。
けなげで可愛い子なんだ。お兄ちゃんが大好きで仕方なくて、側にいないと不安なんだよ。最近6人一緒にいないから余計にお兄ちゃんっ子なんだ、きっと。
目尻に溜まった涙を指で掬っていると、チョロ松くんが心配そうにこちらを見てくる。
「泣かないでください。僕が必ず見つけますからっ」
ああチョロ松くん、なんて頼もしい台詞なんだろう。
「チョロ松くんごめんね、ごめん」
チョロ松くんを困らせるつもりはなかったんだ。
「あ、謝る必要なんてありませんっ!高橋さんはなにも悪いことしてないです。僕が強引に帰ったから…!」
動揺が手に取るように分かる甲高い声。なんだかんだ見捨てないし、優しい人だなって思う。
けど、チョロ松くんてさ、ロボットみたいに関節ピシッとして、
「変な歩き方なのに歩くスピード速すぎるよ」
「急に失礼!!??帰ります!!」
「待って待って!褒めたの!ねぇ、トドちゃんすぐ追いかけてたけど本当に見てないの?」
「はい」
困った。トドちゃんきっと、見当違いな道に進んでるんだろう。
そして、不安になりながら1人彷徨っているんだ。心細くて私の名前を呼び続けているかもしれない。
いや、そこは私ではなくチョロ松くんか。
兄弟と彼女は違うもんね。一緒にいた時間も、絆の強さも。
でも、彼女になれた。少なくとも友達以上の存在にしてくれたんだ。
それ以上を望むのは欲張りなのかもしれない。
「私、向こう探してくる」
「じゃあ僕は反対側を」