第2章 純情スクイーズ
とりあえずはチョロ松くんを座らせる。口をキュッと結び、顔は真剣そのもの。
困ったな。きっと可愛い弟が心配なんだ。話してチョロ松くんが納得いくかどうか…。
「ええっと、知り合ったキッカケは購買のパンを買う時だったかな?トドちゃんが人にぶつかってつまずいちゃって、私が起こしてあげた時に初めて話したの。その時チョロ松くんもいたけど覚えてない?」
チョロ松くんは顎に手を置きうーんと唸っている。
「購買…?そういえば、高2の時揉めた事があったかな。トド松が1個上の先輩に泣かされて、おそ松兄さんと一松が殴りかかる一歩寸前まで暴れたあの時?」
「そうそう!おそ松くんかなり怒ってたけど、トドちゃんが半泣きになってたのは先輩達関係なくて、いちごメロンパン買えなかったせいだって分かって終わった話!」
一部始終見ていた私が、自分が買っていたいちごメロンパンを半分こして平和的解決となったのだ。
そこまで話し終えると、チョロ松くんはコーヒーを一口飲み、こちらを見据えてくる。
「あの、出会いのどーのこーのは分かりましたけど、それからどのように2人の仲が発展し、交際まで行き着いたかが知りたいんです」
そこでまた、クイとメガネを上げる仕草。それすらも威嚇に見えてくる。
「あー、付き合うようになったのは…」
私が一目惚れし、毎日1人でいるところを狙って話しかけ、押して押して押しまくって付き合うようになったなんて言ったら、怒り心頭だろうか。
「私が、その…」
恐る恐る口を開く。
「はい」
目を細め、食い入るようにこちらを見つめてくる。
言いようのない緊張に襲われる。
「トドち…トド松くんと、付き、交際させていただいた経緯は…」
上手く言葉が選べない。
「続けてください!」
「ヒィッ!」
甲高い声が耳に突き刺ささり肩が震えた。と、同時にトドちゃんがトコトコ戻ってきた。
「ただいまー。ん?2人でなんの話してるの?」
チョロ松くんは無表情。何も言わずに涼しい顔でコーヒーカップに口をつける。
「べつに、お前には関係のない話だから。それにちょうど終わったところだし」