第2章 純情スクイーズ
「あ、ボクちょっとトイレ行ってくる」
トドちゃんは天然なのかなんなのか、隣のチョロ松くんが明らかに挙動不審なのにまるで気にしていない。
「1人で平気?場所分かる?」
「だいじょうぶ!」
笑顔が眩しすぎてため息が溢れる。どうすればこんな天使に育つんだろう。今度おかあさまに挨拶に行ってこんな天使を世に生み出してくれたお礼を言いたい。
「気をつけてね。変な人について行っちゃだめだよ?突き当たりを右だからね?」
「もうっ、平気だってば。いってきまーす」
「いってらっしゃい!」
とてとてとて。ヒヨコみたいな足取り。ダボダボな制服。
うんうん、お母さんが背が伸びると思って少し大きめのサイズを買ったのにね、お兄ちゃん達より背が伸びなかったんだね。でも大丈夫だよ。高校卒業した後でも背は伸びるから。まぁ伸びても伸びなくても私はそのまんまのトドちゃんが好きだし、なんなら一生ダボダボなままでもーー
「高橋さん、あの」
「うん?」
見えなくなるまで手を振ったところで、チョロ松くんが声をかけてきた。
「ずっと気になっていたんですけど、どうしてトド松と付き合ってるんですか?」
「急にどうしたの?」と尋ねると、チョロ松くんはおもむろに立ち上がり、
「キッカケは?馴れ初めは?教えてくださいッッ!」
頭を下げながら手を差し出してきた。なんだろうこのプロポーズ感。
「い、いいけど、トドちゃんから何も聞いてないの?」
恥ずかしそうに頷くチョロ松くん。真面目くんだからそういった類の話は気恥ずかしいのかもしれない。