第2章 純情スクイーズ
「高橋さん、決まりましたか?」
「え?う、うんっ!呼ぼうか」
慌てて呼び鈴を押すと、手を伸ばした拍子に胸元のリボンが揺れた。するとなぜかチョロ松くんの瞳が泳ぎだす。
「どうしたの?」
「いえ、べつにっ」
「べつに」の語尾が上ずっている。首を傾げていると、トドちゃんが顔を赤くして私に耳打ちしてきた。
「見えてるよ」
「え?」
「下着」
「あ…」
やってしまった。なんでこうなったのか分からないけど、シャツのボタンが第3ボタンまで外れている。
まだ見せてなかったトドちゃんだけでなくお兄様にまで…。
顔を上げればチョロ松くんがしきりに眼鏡の位置を直している。直してはズレ、ズレては直す。
慌てて第2ボタンをつけてると、トドちゃんが立ち上がった。
「もうっ」
身を乗り出し、固まる私の胸元に手が伸びる。リボンの長さを調節し終えると、指を離しニコリと微笑む。
「ありがとう」
「ボクだけのだからねっ」
「は…はい!」
苦しいくらいドキドキする。
チョロ松くんばかりで私のことなんて興味ないと思ってたのに。だからかな。ヤキモチ焼いてくれるだけでこんなにも胸が高鳴ってしまう。
そして、ささいなアクシデントにより、最近の6つ子に対する違和感はすっかり頭から飛んでしまっていた。