第2章 純情スクイーズ
「あの、そんなに謝らないで。チョロ松くんが悪いわけじゃないし」
"すいません"が15回目になったところで止めに入ると、そのタイミングでチョロ松くんの背中からトドちゃんがヒョッコリ顔を出した。屈託のない笑顔で見てくる。
「のぞみちゃんさっきはありがと」
「もう迷っちゃダメだよ?」
「えへへ、次はチョロ松兄ちゃんとはぐれないように気をつけるっ」
「1人で行けるようにしなさい」
と叱ったのは私ではなくチョロ松くん。確かにチョロ松くんの言う通りだ。お兄ちゃんにいつまでもベッタリなんて、可愛すぎて困っちゃうもんね。
「トドちゃん、お兄ちゃん大好きなのは分かるけどあんまり困らせちゃダメだよ?」
「高橋さん…っ!」
味方だと思ったのか、チョロ松くんはメガネの奥のつぶらな瞳を潤ませた。
一方トドちゃんは、私の一言に肩を落とし涙目でションボリと、
「………ごめんなさい………」
「うん、甘えられるうちは甘えるのも大事だよね」
「高橋さん!?」
瞬時に寝返った刹那、チョロ松くんのメガネがずれ落ちた。ごめんチョロ松くん。母性という名のパッションがトドちゃんを甘やかしてしまうの…。
「はぁ…、まぁ他の人に迷惑かけるくらいなら僕が見ていればいいんですけどね…」
チョロ松くんはメガネを戻しながらため息を溢す。
「のぞみちゃん、ボク迷惑だった?」
「ううん全然」
「も、もうっ!高橋さんトド松に甘すぎですぅっ!」
自覚しているけど私はトドちゃんに甘い。トコトン甘い。