第2章 純情スクイーズ
その日の放課後、帰り支度をしている私の元へ隣のクラスからトドちゃんとその保護者がやって来た。
「失礼しますっ!」
甲高い挨拶と共に、キビキビとこちらに歩いてくるメガネ男子。とてとてとその後ろをついて歩くトドちゃんは、そこはかとなく体の動かし方がバランスが悪く、子供っぽく見える。
メガネ男子は私の机の前で静止し、ういーんがしゃん!と、ロボット音を立てて頭を下げた。
「うちの弟がご迷惑をかけてすいませんでしたぁっ!」
「い、いえいえ」
私の眼前で、模範的なまでにピシッとしたお辞儀が規則的な速さと角度で繰り返される。
「すいません、はいすいません、すいません!家でも言い聞かせてるんですが、まだ兄である僕の教育が足りなかったようです!これからはキチンと教室の場所を把握させておきますので!」
何度も何度も頭を下げながら謝ってくる。風圧が私の前髪を弄ぶ。
止まらないお辞儀にクラスメイトの視線が集まり始めた。
痛い。みんなの視線が痛い…。そりゃあこんな派手に謝られたら何事だ?ってなる。