第1章 恋はプレーン味
「なんかおそ松くんと話してたらおバカすぎて悩みどーでもよくなっちゃった」
「それ褒めてなくない?」
「褒めてる褒めてる!おそ松くんはそのままでいてね」
そのままの俺ってどんな俺だろ?俺自身まだ俺=〇〇の答えが出てないんだけど。
あ、さっき下ネタって言われたか。いやもうちょいなんかないの!?
よし、と前髪をわしゃわしゃして変装開始。
「ぶっぶー!実は俺一松でしたー!」
「うそうそ!一松くんと全然違うもん!」
「そうか?」
「うん。みんな似てるけどみんな違って面白いよね。3年も見てれば分かるって。並んで帰ってたの楽しそうで羨ましかったなぁ」
のぞみちゃんはきっと気づいていない。
その言葉が、俺達兄弟をどれだけ救ってるのか。
(そのままの俺…か)
少し緊張するけど確かめたいことがある。
頬をポリポリかきながら聞いてみた。
「あのさ……さっき俺に、そのままでいてねって…」
「言ったけど?」
「マジで言ってんの?そしたら俺、会う度にのぞみちゃんのスカートめくるよ?今日は何色かなーって楽しみにしちゃうよ?履いてなくてもいいけど」
「じゃあまた明日、おやすみなさい松野くん」
「っておい!冗談だって!!」
背を向けようとしたのぞみちゃんの腕を反射的に掴んでいた。力を込めると手が微かに震える。
「ほんとに俺、変わんなくていいのかな?長男なのに長男感ないっつーか、俺、変に期待されてる気がして、それが正直嫌すぎて…」
なんで俺さっきから、クラスメイトにこんなに自分のこと話しちゃってんだろ?
「時々分かんなくなるんだよ。てかめんどくさくなる!長男じゃなきゃ、6つ子じゃなきゃよかったのにって思った!何度も何度も!」
こんなこと言わない方がいいのは分かってたのに、つい吐き出してしまった。