第1章 恋はプレーン味
「あのさ、俺ってバカだと思う?」
「急にどうしたの?」
「歳取ってけばいろんなこと分かると思ってたのに、逆に分からないことが増えてくんだよ。なんでなんだろうな?脳みそ退化してってんのかな」
「分からないことが分かるって大事だと思うけど。ありきたりだけどよく言わない?井の中の蛙大海を知らずって」
何か考える素振りをしてからのぞみちゃんは続けた。
「でも、強制的に井戸から追い出されていきなり大っきな海を見せられたってさ、私だってどうしたらいいのか分からないよ。広すぎてどこを泳いだらいいのか」
「なんか道徳の授業みたいでゾワゾワする」
「ごめん、じゃあやめよう」
「でもありがとな!バカでも分かりやすい例えだった!」
自分だけ悩んでると思ってたけど、案外みんな見せないだけで似たようなもんなのかもしれない。
「ふふっ、びっくりした。能天気そうなおそ松くんも悩んだりするんだね」
「そりゃあ思春期だからな」
2人して顔を見合わせ笑顔になる。
(俺のことなんか知らないくせに、分かったような口をきくなし)
たぶん、他の奴に言われてたらこう思っていた。
でもなんでだろう。
のぞみちゃんに対してはそう思わない。
俺だって、勝手にフツーな子だって決めつけてたし。
勢いよく立ち上がってのぞみちゃんに向き直った。
「じゃあ青臭い悩みを吹き飛ばす為にデートしよ!この間約束したし」
「えっ?いきなりすぎない?」
仕方ないじゃん。急にのぞみちゃんともっといたくなったんだもーん。
そりゃあエロいことも期待してるよ?でもそれだけじゃなく一緒にいたいのー。
「いきなりデートとか思春期ぽいからいーじゃん!競馬場は……この時間じゃ閉まってるから、そうだなぁ」
この時間と言ったらこれしかない!
「ラーメン!!」
ピンと人差し指を立てて提案する。
「人生初のデートがラーメン……でも、うん、行こう!」
のぞみちゃんは意外にもノリノリだ。
「マジで!初体験もーらいっ」
「あははっ、やっぱりそういう下ネタ言ってふざけてる方がおそ松くんらしいよ」
「ぃよし、俺の進路決まった。一生下ネタ言って暮らす!」
「具体的じゃないなあもうっ」
そう言ってのぞみちゃんは爆笑した。