第1章 恋はプレーン味
なんとなく弟達と一緒の部屋にいるのが嫌になって、夜の街をふらふらしていた。
ここ最近アイツらといるのめんどくさい。なんで弟5人もいるんだよ。しかも全員同い年で同じ顔。なのに俺だけ長男って。やってらんねぇよ。
人気のない公園のベンチに腰掛け、イヤミにお願いして譲ってもらったタバコを咥えてみる。制服じゃないから知り合いじゃなきゃ見られてもべつに平気だろ。
すげー。俺今社会的に悪いことしようとしてる。大人の階段的な!?
慣れない手つきでライターで火をつけてみる——けど、しばらく格闘したのに火がつかない。
ああそっか。吸いながらじゃないと火ぃつかないんだっけ。
確かそうだったはず、と、思い切り息を吸い込みながら、ライターの火をタバコの先につけたらものっすごいむせた。
まっっっず!!
タバコをペッと吐き出し、靴で踏んで即座に消す。
ゲホゲホ咳き込みながら大人の階段を引き返す。
……俺、なに焦ってんだろうな。
バカバカしくなり、顔を上げて夜空を眺めた。
月が今川焼きに見えて腹減ってきた。
気分転換で外に出たのに逆効果だったかも。
帰ろうと立ち上がったところで、通りに見覚えのある顔を発見した。
女なのに、しかもJKなのに、こんな時間になにやってんだろ?
声をかけようとしたけど、胸揉んでからのぞみちゃんのガードが固くて(主に他の女子による鉄壁SP)なかなか話せないでいたのを思い出した。
つかなにあのダサいようで妙にエロい格好。半袖にハーフパンツって。部屋着?生活感がエロいわぁ。って待て。よく考えたら挨拶がわりのスカートめくりおあずけじゃん!?
声かける意味あるか?ハーフパンツ下げてみる?
いやいやいや、それは流石に殺されそう。
それにまだ怒ってるかもな。半分泣きかけてたし。
ちゃんと謝ってねーし。
夜に声かけて、変に警戒されて痴漢呼ばわりされたらたまったもんじゃない。
けど、うん。
考えるの飽きてきた。
どう思われてるかとかめんどくさいわー。
どうでもいいわー。
てなわけで普通に声をかけてみた。
「のぞみちゃーーん」
ぶんぶん手を振ってみる。
のぞみちゃんは俺に気づくと、一瞬驚いた表情を見せながらトコトコと近づいてきた。