第1章 1年生
「へぇ、そんな立派なこと言うってことは相葉先生はさぞかし勉強してたんだろーな」
「っ、大野先生!聞いてたんですか!?」
振り向けばニヤニヤした大野先生が立っていた
「俺は相葉先生はバスケしかやってなかった、って聞いたけど…?」
「ちょっと、もーっ!
俺は成績悪くなかったから良いんですってば!」
ほぅ…なんて相変わらずニヤつきながら大野先生は、くるりと俺に背を向けて職員室へ歩いていく
大野先生は2歳年上の美術の先生だ
俺がこの学校に来た時、職員室の席が隣で色々と声をかけてくれた
ふにゃふにゃと頼りなさそうな雰囲気だが、しっかりと生徒のことを見ているし、相談事に乗っている姿も見たことがある
何より本当に絵が上手くて、教え方も上手だと生徒からの評判は高い
年齢が近かったこともあり、プライベートでお互いの家に行くほど仲良くなった
生徒たちの美術の授業自体は週に1回だが、うちのクラスの中に美術部が3人いることもあり、生徒について相談することも多い
「大野先生、今日の夜って予定あります?」
「いんや、何もないけど…飲みに行く?」
「はい、行きましょう!」
大野先生が顧問の美術部も、俺が副顧問のバスケ部も、週に3、4回程度の活動しか無かったので夏休みはほぼ毎日一緒にご飯を食べていた
夏休みが明けた二学期は文化祭の準備に追われる
うちの学校は大学受験と重なる3年生も強制参加だが、比較的準備する時間の少ない飲食店担当になる
なので1年生は校舎の教室を使って何か店をやらなければいけないのだけど、
各々部活動でも参加するので、それぞれ出し物や展示、中学生の勧誘にも行かなければならず、意外と難しい