第3章 2年生 出逢い
相葉ちゃんがしっかり寝ていることを確認して、俺は携帯を手に取って電話をかける
『もしもし、智くん?』
電話に出た彼は真夜中だと言うのに元気そうで、ふわりと笑っている綺麗な顔が浮かぶ
「ごめんね、こんな時間にかけちゃって
今って少し大丈夫?」
『うん、今の時間は割りと暇だから平気だよ
それに智くんからの電話って珍しくて嬉しいし』
少し照れたように話すその声に愛しさが溢れ出しそうになるけど、今の彼と俺は好きだ、なんて言える関係では無い
『…それでどうしたの?
明日も仕事あるんでしょう?』
「あ、うん
実はそっちのお店のことで聞きたいことがあって、」
『俺の店のこと…?
益々珍しいね、俺でいいなら何でも答えるよ』
「ありがとう、あのさ…」
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「ふぅ…」
電話を切って今の会話の相手を思い出す
低めの優しい声
智くん、という独特のイントネーションで俺を呼ぶ
キリッとした眉毛にアーモンド型の大きい目
通った鼻筋にぽってりとした唇
美しく格好良い名前すらも負けてしまいそうになる端正な顔立ち
仕草や言葉使いも綺麗で洗練されているのに、目尻にシワを作って豪快に笑う所がたまらなく可愛かった
今はもうただの友人で、大切な親友だ
離れることは2人で決めたことだし後悔なんてしていない
だけどこうやって話してみると思い出す
俺は彼を愛していたこと、彼が俺を愛してくれたことを
「翔くん…」
名前を呼んでみると、さっきまで電話で話していたのにもう彼の声が聞きたくなった