第2章 万事屋銀ちゃん
「いや、は?」
「は?じゃない。良いから腹切れって言ってんの」
「いやいやいやいや!何の冗談?!」
胸倉を掴まれた時よりも顔面蒼白しているこの馬鹿兄貴。冗談じゃない、私は本気だ。
「店内で暴れて人様に迷惑かけた上に責任を押し付けてアンタはのうのうとしてるってどういう事?それでも侍なのアンタ?この子は仕事先失ったのよ?腹切れ」
銀の額に人差し指を突きつけながらやっぱり切腹要求をする。人様が仕事失ってんのに根本的な原因が悠々としてるなんて言語道断。
「おま…仰ることは確かですけれども!!何も切腹まで…」
「安心しろ、解釈はしてやらないから病院行けば痛いで済む」
「お前切腹の事楽観視し過ぎだろ馬鹿なのか?!」
「馬鹿はお前だ腐れ天パ」
私は捨て台詞を銀に吐き捨てながら迷惑をかけてしまった青年の方を向く。
彼は私と銀のやり取りに驚いていたようだが私が向き合うと表情を硬くして…というか怒った表情になる
「えっと…腐れ天パがすまない事をしたね…謝って済む事じゃないけれどあなたの転職先が見つかるまで私が協力する」
「今時侍を雇ってくれるところなんてないんですよ!」
私の一言で怒りを思い出したのか言葉を強くして銀に向かって怒鳴る眼鏡の青年。うーむ、地雷踏んだようね私。
「明日からどうやって生きていけばいいんだチクショー!!」
木刀を振りかぶり走り出したと思ったら何と私が目を離した隙に逃げ出そうとしている銀がいた。再起不能になるまで殴ればよかったかな、アイツ。
で、次の瞬間銀はスクーターの後輪をあげると眼鏡君の急所にヒットさせた。これは酷い。
「ギャーギャーやかましいんだよ腐れ眼鏡!!自分だけが不幸だと思ってんじゃねぇ!世の中にはなぁダンボールをマイホームと呼んでる侍だっているんだよ!もっとポジティブに生きたらどうだ!!」
「アンタ、ポジティブな意味わかってんの?!」
「というかそれもはや侍なのか」
私にはよく理解のできないことを言う銀に眼鏡君と私はツッコミを入れた。