第2章 万事屋銀ちゃん
「いってぇな!何すんだよ!」
「ふざけた事言ってる銀が悪い、悪く思うな」
鼻っ面に買い物バッグを叩き込んだ私は冷ややかな視線をスクーターに乗っている兄を見た。
ちなみに私はこの兄を兄さんとは呼ばず銀と呼んでいる。
って、あれ?いつも持ってる木刀どこやったのこの馬鹿兄貴は。あれ以外と高いんだけど。
「おい馬鹿、木刀は」
「とうとう銀とも呼んでくれなくなったんだけど…あ?木刀?あれはあげた」
「は?」
あれ一本いくらすると思ってんのこの馬鹿兄貴は。
護身用って事で買うの許可したけど…あげた?
気づけば私は腐れ天パの馬鹿兄貴の胸倉つかんで拳握りしめてた。馬鹿兄貴は顔面蒼白してるし。
するとこんな馬鹿兄貴でも救いを出してくれる神様がいたのか後方から叫びながらこちらに向かってくる青年がいる。手にはその木刀が握られていた。
「腐れ天パに何か御用ですか」
「優〜?今俺の事腐れ天パって言った?」
「黙れ腐れ天パ、今あだ名で呼ぶなキモい」
「酷え」
私はうだうだ言ってる銀の事を無視して木刀片手に走ってきた青年の話を聞く。
要するに、銀は青年がバイトしてたカフェでパフェをこぼされた事にキレてチャトラン星人2人をボッコボコにしてそのあと責任やらなんやらを全て彼に押し付け今に至るらしい。
話を聴いている間そろりそろりと逃げ出そうとする銀を見るあたりこの話は本当みたいだ。
「おい腐れ天パ」
「な、何でしょうか」
「腹切れ」
「……は?」
銀は唐突な私の切腹要求に目を白黒させながらこちらを見ていた。勿論私は冗談では言ってない、本気だ。