第8章 約束は必ず守れ
「さて、私はおじさんとお話ししてくるわ」
「じゃ、俺も」
銀と一緒に、マネージャーさんとの話を終えたであろうおじさんの元に寄って行った。
「アンタ、娘の晴れ舞台を見にくるためにここへ来たってこと?」
「そんなんじゃねェ、バカヤロー。昔約束しちまったんだ」
「約束?」
「もしも歌手になったら百万本のバラを持って会いに行く…ってな……」
へぇ…そんな約束をしていたんだ…でも娘が歌手になる前におじさんは罪を犯して逮捕され服役中だった…ってわけね……
隣で風船ガムを膨らませすぎて慌てている銀を殴りながら私は自分なりに考えをまとめていた。
「覚えてる訳ねーよな、十三年も前の話だ…いや、覚えてても思い出したくねーわな。人を殺めちまったヤクザな親父のことなんかよォ……」
自暴自棄になりながらそう話すおじさんの顔はどこか寂しそうだったし悲しそうだった。
「……私はそんなことないと思うけど…大体そんなのは本人に聞かないとわかんないでしょ……」
親の心子知らず、子の心親知らず……
恐らくおじさんは前者に近いだろうね。
「ま、どうするかはアンタ次第だけど…」
そういえば銀が珍しく静かだ…何してんのかと思えば顔面いっぱいに風船ガムを付けてた。
何やってのお前、今までの雰囲気ぶち壊しだよボケ。
「銀ちゃーん!優香姉ー!」
「ん?どうかしたの神楽ちゃん?」
「会場が大変アル。お客さんの一人が暴れ出してポンド発射」
「はい?」
「普通に喋れ!訳わかんねーよ!」
「いや、あの会場にですね天人がいたらしくて。これがまた厄介な事に食恋族…興奮すると好きな相手を捕食するという変態天人なのです」
その相手っていうのがお通さん、ってわけね…
気づけばおじさんはライブ会場に慌てて走って行った。
私は…そうだな…今回は一度銀達に任せよう
私はダッシュでライブハウスの外に出ると少しあたりを駆け回ってある物を探した。