第5章 夜兎の少女
「…何の御用でしょう」
一先ずそこから話を切り出した。
相手の言動で腹を探る。こういう筋の連中と絡むには必要不可欠なスキルだけれど、案外こういう世界にいる奴らは持ち合わせていない場合が多い。
そういう奴は俗に言う馬鹿。
「なぁに、ちょっとお話ししてぇだけよ」
「正直に言えや?メガネのガキとチャイナ服のガキどこやった?」
「あなたが何を言っているのかまるで理解できないわね?」
まだ、気づかれていないっぽい。
「そっかー、知らねえかー…ところでこれから姉ちゃん暇?俺たちと遊ばねえ?」
待て待て待て待て待てっ!!これは計算外だ!!ここでナンパされるとか意味分かんない!!
分かりやすく鼻の下伸ばしてんじゃねぇよ!!キモいわ!滅べ!
……いや、ちょっと待った。コイツら地味に私のこと囲んでね?妙に声大きめで話してね?……まさかとは思うけど視界と周りの音を遮断してる?
連れ去りたいって願望もあるんだろうけど…
私は目の前の男どもを押しのけて2人がいたところに目を向ける。
予想通り一際強烈なパンチパーマのグラサン野郎がゴミバケツに入ったままの2人を線路上に落とした直後だった。
というか、2人は何でゴミバケツから出ないの?!まさかハマったの?!出られなくなったの?!
予想外すぎるわっっ!!