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「残し置く」「瀬をはやみ」「誰に見せ」

第1章 思い出


神社や、周りを案内してあげるって無理矢理誘った私に付き合ってくれて、二人でその辺を歩いた。
桜の時期でも紅葉の時期でも無かったけど、近くの山々が一望出来る所へ連れて行ったら、銀おじちゃんはしばらく見とれてた。
何だか声をかけづらいくらい、じっと見ているから、草を摘んだりして待ってたら、近くに住んでいた友達が通りがかったの。理由は覚えてないけど、その時私、その子と喧嘩していてね、お互いフンッって感じでやり過ごしたら、景色を見ていたはずの銀おじちゃんが不思議そうな顔で私を見るから、喧嘩中だって言ったの。
そしたらね、
「友達は大事にしな。銀さんも昔からの知り合いと喧嘩しちまって、ずっと仲直り出来ないままなんだ。取り返しつかなくなる前に、ちゃんと話をしてきな」
って、すごく、すごく真剣に言われた。怖いくらいだった。
私は頷くしかなくて、そのまま友達の所へ走って行って、ごめんねしたの。お互いタイミングを探してたのね。すぐに仲直り出来て、ちょっと一緒に遊んでから別れて、銀おじちゃんの所へ戻ったら待っていてくれた。
仲直りしたよって言ったら、本当に嬉しそうに笑って、ご褒美って肩車してくた。
背が高い人だったから景色が全然違って見えて、何だか自分が偉くなった気分で、
「銀おじちゃんも友達と仲直りしなよ」
って言っちゃった。
そしたら、すごく小さな声で
「そうだな」
ってつぶやかれたわ。
「どうして喧嘩しちゃったの?」
って聞いたら、少し話をしてくれた。
子供の頃から一緒にいて、とても悲しい事があった時も、死にそうな目にあった時も、ずっと一緒に頑張っていたんだけど、大人になって考えがすれ違ってしまって、そのうち逢わなくなってしまったって。お互いが本当はどんな考えなのか、もっとちゃんと話せば良かったって。
伝えたい言葉はたくさんあったけど、どうしても口から出てくれなくて、 何も語らないうちに別れたままだって。
大人は嫌だねって、悲しそうに笑ってた。
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