第8章 ⅷ
寝付けずに朝になってしまった。4連休だったことを忘れてしまっていて、今日合わせてあと3日間休みだったと、働かない頭でカレンダーを見て思った。
燭台切さんが姿を消してから2日。今日は外へ出ようと思って身支度をした。
近くの公園に足を運んでも見慣れた姿はなく、小さい子とその母親が遊んでいる姿を見かけるだけだ。
1度家に戻って遠出するための準備をした。
スマホで色々調べて、電車に乗り込み、大きな駅に行って高速バスに乗り換えた。
バスに何時間か揺られて、キャリーケースをコインロッカーに入れてからとある場所に向かった。
受付時間にはまだ余裕があったから安心して中へと入る。
私は本当の目的の場所まで来た。それは刀の燭台切光忠がある場所だ。
咄嗟に何も考えずに来てしまったが、吸い込まれるように展示室へ足は動く。
展示されている目の前に来て、それを初めて見た瞬間固唾を飲んだ。
とても綺麗だ。
ショーケースに阻まれている刀に吸い寄せられるように私は近寄る。生まれて初めて見る刀だけど、もう刀として使うことかできない、焼身となってしまった刀。
その刀の近くに気配がして、ショーケースから目を離すも気の所為だったらしい。再び刀に目を戻した。ガラス越しに刀をなぞる。少しでも知れた気がする。
どれくらい見ていたかは分からないくらい時間が経っていた。
そろそろ閉館のアナウンスが流れて、私は惜しむように建物を後にした。
咄嗟に家を出てきてしまい、しかも遠い地で見ず知らずの土地で、燭台切光忠を見たあとどうするか全く決めていなかった。