第10章 x [完]
女性が手を離すと、元の位置に座り直した。
「燭台切、隣にいる女性を泣かせてはいけません。貴方の為に全てを捨てたのです。人間は儚く脆い。それを忘れないでください」
「もちろんだよ。彼女の事、大切にするよ」
「心海さん、困ったらここへ連絡してください。何かあれば力になりますので」
連絡先を書かれた紙を託される。
まるで夢を見ているみたいだった。
それから私と燭台切さんはゲートを通り、鳥居が沢山ある道を進んだ。
空気が澄んでいて、鮮やかな景色が目に入ってとても綺麗だ。
日本家屋と言えど設備が現代風な家に入り、新築の香りがしてとてもワクワクした。
「心海ちゃん、気に入ったかな?」
「はい!とても素敵です、ありがとうございます!」
「ううん、これからここで僕と暮らすんだから、喜んでもらえたなら嬉しいよ……僕の神域へようこそ」
そう言って手を差し出した彼の手を握った。
私は神様に魅入られた
言葉にすると怖いけど、私には燭台切さんが居ればいい。
傍から見たらそんな考えはメンヘラ、重い女、気がおかしいと捉えられるだろう。でも私は純粋に彼のことが好きだ。恋は盲目と言うけど、後悔なんて全くない。
これからの生活が楽しみで仕方なかった。
神に魅入られると言うけど、私も神を魅入ってしまった。
夢や幻でもなく現であることを握った手の体温がそういっていた―
-fin-