第7章 vii
私の目の前に燭台切さんが歩いてきた。
「おかえり、今日は遅かったね」
「すみません」
「ううん、それだけ頑張ってる証拠だよ」
彼はことある事に甘い言葉をかけてくれる。それがあるから毎日頑張ろうと活力になっている。でも今日はその優しい声に涙がこぼれる。泣いたら迷惑かけると思うのに止まらない。
「ど、どうしたの?とりあえず帰ったら話聞くよ。暖かいご飯食べようね」
ボロボロと泣き出した私の手を握って帰路に着く。
家に着くと私をベッドに座らせて、カバンと上着を持ち、所定の場所に置いた。
ご飯を温め直していて、レンジの音が鳴りテーブルに再度置いていく。
「ご飯食べようか」
ベッドに座らされてからも涙は止まらなかった。久しぶりに泣いた。
「どうしたの?会社で何かあった?」
「ミス、しちゃって、みんな、フォローしてくれたけど、陰で悪口言われてて、悔しくて、辛くて、こんなこと、はじめてだからっ」
「頑張ったね」
私の隣に座りながら私の頭を撫でてそう言った。
「心海ちゃんは、頑張ってるよ。誰にだってミスはあるし、陰でそういうことを言う人間はそれだけの狭い器の人間なんだよ。だからもう、泣かないの」
その言葉に余計に泣いた。優しい言葉をかけられたのは久しぶりだ。仕事の疲れもあってか泣き疲れてそのまま、ご飯を食べかけのまま寝てしまった。