第3章 ⅲ
「燭台切、さん」
スマホに映し出されたページを見て、彼を見て名前を呼んでしまった。
「どうしたの?」
「あ、いや、ううん、呼んでみただけです」
「そう?何かあったら言ってね」
カチャカチャと皿を洗う音だけが響き渡る。
それからスマホに目を移して、燭台切光忠の事が書かれているページを見ていった。
少しだけ刀の燭台切光忠について知れた気がした。
片付けも終わったのか、私の隣に座ってきた。
「…何から何までありがとうございます」
「気にすることないよ、心海ちゃんはここで言うと僕の主みたいなものだからさ」
「主って人は女の人だったんですか?」
「うん、そうだよ。主は僕達をとても大切にしてくれてたんだ」
「会いたいですよね」
「そうだね。主が心配しているかもしれないし、僕の仲間だって心配してるかもしれない。なにか連絡取れればいいんだけど、生憎そういうのがいつのまにか無くなってたんだ」
心配かけまいとしてくれるのは伝わるけど表情からは悲しそうなものを読み取れる。
「私、燭台切さんが帰れる手段を探します。帰れるまでずっとここに居てください」
「ありがとう……君は優しいね」
彼の仲間も心配しているかもしれない。ただ1人こんな世界に来てしまって、不安だろう。早く帰れる手段を見つけてあげようと思った。
でも、心のどこかで彼を帰したくない自分がいた。