第22章 赤札
【慶次】
行かせない・・・・っ、行かせないぞ・・・・。
我儘なのは分かっている。
身体中に俺の痕をつけたって、百之助は行ってしまう。
それならどうすればいい?百之助を行かせないためにするには、俺の腕の中にずっと閉じ込めておくには・・・・。
【百之助】
妙な考えは起こすなよ。独占欲が強いのは悪いことじゃないが、俺の気持ちも少しはくみ取ってくれ。
【慶次】
そう言われたって、不憫すぎる。
横たわっている胴体に身体を預けると温かくて、心拍音が聞こえる。トクトクと少し早い脈が流れていて、少しだけ気持ちが落ちついてくる。
【百之助】
俺はそう簡単に死なない。必ず帰ってくるから、その時は思い切り抱きしめてくれ。
【慶次】
・・・・絶対、絶対だぞ。
生きて必ず帰ってこい。
そうして深いまぐわいながら一夜を明かす。目を閉じたら明日が来て、日が昇る。
固い約束をして、百之助は再び戦線へと歩き出す。
俺は約束の日を待って、絵を描き、螺鈿の欠片を嵌め込んでいく。
いつかアイツが帰ってくる日まで、最高の笑顔で迎えられるように。