第22章 赤札
赤札は、赤いハガキということから赤札と呼ばれている。軍隊の予備役として、召集する目的で作られた個人あての令状だ。
兵役を終えてもなお、それで終わりというわけではなく、再び戦線へ送られるという死神の通知のようなもの。ハガキを確認すると、応召者氏名、住所、召集部隊名、到着日時などが書かれており、間違いなく百之助に宛てたものだ。
【慶次】
くそっ・・・・。
【百之助】
どうやら俺の腕が必要とされてるらしいな。
【慶次】
やめてくれ・・・・、どうして百之助なんだ・・・・っ。
嘆いたって仕方がないことくらい分かってる。
もし放棄すれば罰金や拘留などの措置がとられ、下手に匿うことはできない。
町の人間や家族、百之助も喜んでおり、俺は耳にしたくないとばかりに部屋に塞ぎ込む。
【百之助】
・・・・・・・・入るぞ。
薄暗い部屋に入ってきた百之助は俺の髪を撫で、そっと優しい口づけをする。
【百之助】
男前が半減だぜ。俺のこと、最後まで見届けてくれよ。
【慶次】
百之助は平気なのか?なんでそんな、平気そうな面でいられるんだよ・・・・っ。
好きな奴をそう易々と戦前へ送れるわけなんて出来ない。
前回は上手く免れてることは出来たが、今回のは確実に国境を渡って、ロシア国と戦わなければならない。
危険すぎる。
命がいくらあっても足らない。
戦争が憎い。
百之助を失いたくない。
【慶次】
行かないでくれ、百之助・・・・っ。
【百之助】
無理いうなよ。アンタも大事だが、日本がなくなれば俺たちの住む場所も無くなっちまうんだぜ。
【慶次】
遠くに逃げよう。誰もいない場所に、俺と二人で。そうすれば、こんなつらい別れ方をしなくても済む。
今回ばかりはどうしても行かせたくなかった。
ここで止めなきゃ、諦めさせなきゃ、永遠に百之助を失うような気がしたからだ。
俺はここぞとばかりに百之助の身体を抱きしめて、畳の上に押し倒す。