第22章 赤札
明治37年2月 日露戦争勃発。
明治38年9月 日露戦争終戦。
生死も分からないまま百之助の帰りを待ち続けること1年7か月。
今日もいつも通り百之助の部屋を掃除し終え、二階の階段を降りていくと、軍服を着た男が立っていた。
【慶次】
・・・・・・・・・・・・え?
その男の頬はすすけており、百之助ではないことは確かだ。両親は男から布に包んだ何かを受け取ると、小さく背中が縮こまっている。
【慶次】
・・・・・・・・、
たしかな一歩一歩踏みつつ、その布に包んでいたものをのぞきに行く。
両親の隙間から、そっと、後ろを通り過ぎると、・・・・そこには小さな螺鈿札と骨の一部があった。
【慶次】
っ・・・・。
背中からどっと汗がふき出す。
心拍が上がって、耳に入る言葉が全てから逃避したくなる。
ドクンドクンドクンドクン・・・・
【慶次】
うわああぁぁぁあああ──
絶望の悲鳴を上げた。