第22章 赤札
退院してからも月日は流れて、俺たちは肩を並べて仕事をする。
【慶次】
百之助。・・・・あ~ん。
団子もちを口の近くまで持っていくと、百之助は口を開けてパクリと頬張る。その様子を羨ましそうに見ていた が膝の上に乗ってくる。
【 】
も、あ~ん、して?
【百之助】
ほら、 。口開けろ。
【 】
あ~ん。おいち~っ。
【慶次】
良かったな~、 。
百之助は小さく千切ったものを に食べさせ、ほっぺたが落ちそうなくらい美味しそうに食べている。よく噛んでいることを確認しながら、口の周りについた食べかすを拭いてやる。
【百之助】
慶次。
【慶次】
ん、俺も?・・・・あ~ん。おいち~っ。
【百之助】
・・・・それはさすがにねえな。
【慶次】
引いた目で見るなよ。男はいつだってお年頃なんだ。な、 。
まだ分かっていない の頬を突いていると、その様子を見ていたすずは静かに声を上げる。
【すず】
子供は良いけど、大の大人が二人して食べさせ合ってるなんて見てるこっちが恥ずかしいわ。
【慶次】
仲間外れだから寂しいんだろ。ほら、早くしないとあ~んしてやんないぞ。
【すず】
別にそういうわけじゃ・・・・、あ~ん。
そんなことをやり合っていると、居間に顔を出した弥彦は何やら浮かない面持ちをしている。
【弥彦】
百之助さん。役場の人が本人に直接渡したいものがあるって。
【百之助】
俺に?
【慶次】
(役場の人間?)まさか・・・・。
嫌な予感がした。
一緒に店の前まで行くと、役人はカバンの中から赤いハガキを取り出す。
【役人】
尾形百之助さん、本人で間違いありませんね。召集令状です。
【慶次】
っ・・・・。
それは、忌まわしき赤札だった。