第3章 子供
俺の家から百之助の家まで3粁ほど離れている。
基本無口で無表情の百之助はただ黙って手を引かれており、ふと画帖に興味を示していることに気が付く。
【慶次】
見たいか?なら、あそこで少し足休みするか。
枯れた葉の道草に座り込むと、冷えるだろうと思って胡坐の上をポンポンと叩いて、手を広げてみせる。
すると実は案外、人懐っこいのか膝のうえに大人しく乗ってみせた。
【慶次】
(か、かわいい・・・・)
膝の上にちょこんと座り、体温が密着する。
子供の体温は温かい。
子供の独特の匂いも好きだ。
今までほかの子供たちを膝に乗せてきたが、なんだこの達成感。ようやく心を開いてくれた仕草を見せて、じわじわと胸は熱くなる。
そんな俺の心の内を知らない百之助は振り返って、早く画帳をみせろと言わんばかりの視線を寄こす。
【慶次】
あ、悪い・・・・。
手に持っていた画帳を開き、その身体を後ろから抱きしめるように腕を回す。
腕の中にすっぽりとハマった百之助は絵をなぞって、時折これはなに?と興味を示してくれる。どれも真剣な様子で絵を見ており、なんにでも無関心というわけではなさそうだ。
【百之助】
まだ他にもあるの?
【慶次】
家に行ったらいっぱいあるぞ。今日だけじゃ見切れないかもな。その前にうちには鳥を捌ける人がいないから、このシギを精肉にしてもらわないとな。
俺の絵に興味を示してくれたことも分かり、町中に着いてから肉屋で鳥を捌いてもらう。
家に着いてから母に事情を説明すると感心を寄せたように、こころよく今日は鳥鍋を準備してくれることになった。