第3章 子供
夕飯が出来上がる間にこれまで書いていた画帖を見てもらい、客間から百之助が寝る時に必要なものを用意する。
部屋に戻ると、数分のあいだで画帳があちこちに開きっぱなしで置いてある。
【慶次】
こりゃまたずいぶん広げたな・・・・。
子供は本当に自由奔放だ。
少し大人びたところも見えたが、百之助もやっぱりまだまだ子供なのだろう。そこもまた何とも可愛らしいところだ。
それよりも今は画帳ではなく、螺鈿細工に興味があるようで、漆器をじっと見ている。
画帖を片付けようと手を伸ばすとその視線は動き、手を止める。
【慶次】
片付けちゃ駄目だったか?
【百之助】
・・・・・・・・ここに猫いる?
【慶次】
猫?
開いてある画帖を見てみると、共通して猫が描いていることに気付く。
どうやら一度も猫を見たことがないらしく、見たいとは直接言わないが、今度見れるところに連れていくか?と誘ってみると、素直に頷いてみせる。
・・・・また逢える。
約束をとりつけたということは、またこうして会って話せるということ。少なくとも以前よりは距離を少し縮めることが出来た。
約束のしるしとして指切りげんまんの小指を出すと、小さな小指が絡みつく。
もっともっと百之助のことが知りたい。
待ち遠しい期待を馳せながら、夕飯が出来たと声がかかったので一緒に部屋を片付けた。