第19章 騒動
精気を搾り取られたようなゲッソリとした百之助がいたため、茶屋を出たのは夕方頃。
腰を押さえて歩き出す百之助に手を貸す。
【百之助】
いや、いい。誰が見ているか分からない。
【慶次】
問題ないだろ、これくらい・・・・。
すると百之助が敏感に目を光らせて、後ろを振り向いて目を細める。
俺も合わせて振り返ってみるが、ただ茶屋の廊下が広がるだけだ。
【慶次】
どうかしたのか?
【百之助】
いや見間違いか・・・・。なんでもない、行くぞ。
俺の性欲は百之助より底なしだったことをが判明し、少し反省しつつ茶屋を後にする。
まずは昨晩、男傾城の山吹に借りたものを返さなければと白蓮屋に足を運ぶ。
【よもぎ】
・・・・あ、慶次様、百之助様。
店の近くに行くと山吹と一緒にいた、新造の"よもぎ"がちょうど出てきたところだった。
【慶次】
こんばんは。これから何処かへ行くのか?
【よもぎ】
うん。もしかして、山吹に用があった?
【慶次】
返したいものがあってな。店にいるか?
【よもぎ】
ううん。店にはいないけど、今から屋敷にお呼ばれしている山吹に届け物をしようとしてたんだ。一緒に行くか?
【慶次】
いや・・・・、やめとくよ。揶揄われそうだし。すまんが渡しといてくれないか?こんな形で申し訳ないが、また今度遊びに来たきたときよろしくって。
【よもぎ】
分かった。山吹にはちゃんと伝えておく。それじゃあ。
【慶次】
ああ、気をつけてな。
まだ可愛げのあるその頭を撫でてやると、"よもぎ"は細く微笑んで軽く手を振って夜の街へと消えていく。
その様子を見送っている俺の顔を見て、百之助は意味ありげに微笑む。
【百之助】
どうやらアンタは、山吹よりよもぎの方がお気に入りらしいな。
【慶次】
頭撫でたくらいで妬くなんて可愛いな。お前も撫でられたいのか?ん?
【百之助】
やめろ。今ここでするな。
百之助は跳ね飛ばすような言い方をするも、やはりヤキモチを焼いていたようだ。
昨晩はお楽しみが過ぎたので、少し落ち着ける旅館を探し、何もすることがなくても一緒の布団で眠り合った。