第18章 嫉妬*
それ以上悟られなくないと思った百之助は店を後にするといい、真相を語らないまま茶屋になだれ込む。
襖を閉めると靴を脱がないまま、しがみつく体温が背中に伝わってきた。
【慶次】
どうしたんだ、百之助・・・・?何も言わなきゃ分からんぞ。
【百之助】
・・・・・・・・悪ふざけが過ぎた。
横腹にまわる手が服を握り、それはわずかに怯えているように震えている。心境をあらわすように発した声も小さく身震いしており、切ない気持ちがじわじわと伝わってくる。
【百之助】
アンタが俺が特別だって言ってくれた時は嬉しかった。俺しか抱けないんだと思ったら独占できた気分になって舞い上がってたんだ。でも今日のアンタは違った。俺以外に反応した。胸のところが苦しい。アンタが嫁を作った以上に苦しくて・・・・息ができない。
【慶次】
百之助・・・・。
今すぐ抱いてやりたい。
強く抱き締めて、俺の愛情も何もかもすべて百之助に注いでやりたい。
百之助は俺の身体を離そうとはしなくて、そっと手を重ねる。
【慶次】
それは嫉妬って言うんだ。その言葉を聞けて、俺は死んでしまいたいほど嬉しいよ。
【百之助】
ならいっそ、ここで心中するか?吉原ならよくある話だ。
【慶次】
そうだな・・・・・・・・、
回されていた腕が緩み、前を向き直すと百之助が視線を上に見上げている。
どうしようもなくその愛おしい顔を撫で、そっと口づけを落とす。
【慶次】
今はもったいない気がする。死ぬほど愛してやるから覚悟しろ。