第17章 男傾城
陰間茶屋にたどり着くと、店先から楼主が顔を出す。
【楼主】
いらっしゃいませ。お客様はどのような傾城をお望みですか?
【慶次】
(うわ、いきなり出てきた。ええっと・・・・)
【百之助】
猫のような男娼を頼みたい。
【楼主】
猫、ですね。ご予算はいくらお持ちでしょうか?
【慶次】
ああ、これくらいあれば足りるか?
【楼主】
十分でございます。それではお部屋へ案内いたします。
にこやかな笑顔で対応され、部屋に案内させられる。俺が奥の方に座り、部屋の中を観察していると襖越しに若い男の声が聞こえた。
【山吹】
失礼いたします。私、この白蓮屋の太夫を務めさせております、山吹と申します。
【よもぎ】
・・・・新造のよもぎです。よろしくお願いします。
【百之助】
入って来てください。二人とも若旦那様のとなりへ。
【山吹】
かしこまりました。
顔を上げると、それは男と思えないほど美しく映る。
山吹と名乗った傾城は、釣り目気味な猫目で、意志が強そうな目つきで俺を見据えると、少し挑発的な笑みを浮かべる。
もう一人の"よもぎ"という新造は、まだあどけなさが残り、猫というより狐顔で、磨けば化けそうなくらい素質を持っていそうだ。
【慶次】
(な、なんなんだ。胸がざわざわ・・・・って、俺は男色家だったのか──?!)