第17章 男傾城
しぶしぶ承諾し、裏手にある吉原遊郭の大門をくぐる。
木の格子の隙間から遊女が猫なで声をあげており、足早に歩いている俺の横に百之助もついてくる。
【百之助】
アンタ、緊張してるのか?
【慶次】
そうじゃないけど。こういう雰囲気は苦手なんだ。
【百之助】
勃った?
【慶次】
勃ってない!
耳打ちで話していたが思わず少し声を張り上げてしまい、口元を抑える。百之助は男の傾城に興味があるらしく、俺は思わず耳を疑う。
【百之助】
女はもう済んだ。あとは他の男と試したい。
【慶次】
──っ・・・・。
思わず出掛かった言葉を止める。俺たちを知るものは誰もいないが、痴話話をすれば色眼鏡で見られるのは間違いない。
百之助が他の男に組み敷かれているところを想像してしまい、ギリリと歯を軋ませると、百之助は顔色を変えず肩を軽くたたく。
【百之助】
冗談だ。俺が試したいんじゃなく、アンタが試したところを見たいだけだ。
【慶次】
・・・・はぁ?
抜けた声を出したところで、百之助は「俺以外の男に勃つのか」が知りたいらしい。
俺は同性愛者じゃないが百之助以外に勃たつことがないことを証明するため、数少ない男娼の店を探すことにしたのだった。