第13章 子作り*
【慶次】
すず、聞いてくれ。
【すず】
っ・・・・。
額を合わせて固定すると逃げ場を無くしたように、涙ぐんだ目で瞼を震わせている。まばたきをするたびに落涙し、親指ですくいあげる。
【慶次】
俺は誰でも良いと思って結婚したんじゃない。たしかに女を好きになったり抱きたいとは思ったことはないけど、すずならこんな俺の理解者になってくれると思ったんだ。
【すず】
・・・・どうして、私なの?
【慶次】
昔から知ってるからっていうのもあるけど、機転が利くから一緒にいると楽しいし、居心地がいい。大人になるたびに綺麗になって、苦手だった料理も上手になって、俺好みの薄味ですごく気に入ってる。仕事も頑張ってくれて、お前の元気な声を聞くとすごくやる気になれる。すずはよくやってくれてるのに、お前が求める期待には応えられない。お前が他の誰かに取られるのはすごく寂しい。こんなわがままな俺だけど・・・・少しずつ愛させてくれないか?
抑揚のない声でハッキリと告げると、静寂が流れる。
嘘はついていない。
これがすずに対する本心だ。
恋愛ではなく家族としてみる愛情。
それ以外をいったら嘘になる。
これで百之助を守ることができるのだろうか。
百之助と一緒にいることが許されるのか。
それともすずは家族に言いふらして、俺たちを別れさせようとするのか・・・・。
わなわなと震えていた目頭の熱が引っ込むと、何かを覚悟したように前を見据えた。
【すず】
・・・・・・・・最後に一つだけ確認したいわ。貴方、男が好きなの?
【慶次】
百之助が特別なだけだ。他のどんな奴を想像しても抜けない。
そう断言すると、頷いたすずは俺のものに手を伸ばした。